αxSC シンポジウムシリーズ
-- 「なにか」とスーパーコンピュータ --

「データサイエンスとスーパーコンピュータ」

シンポジウム概要

近年、スーパーコンピュータを始めとする計算機の計算能力の向上に伴って、大規模なデータを対象としたデータマイニングや機械学習、人工知能などの、データサイエンス分野に関心が集まっています。伊都キャンパスに最初に導入されたスーパーコンピュータシステム ITOは、このデータサイエンス分野の利用を支援するためのハードウェア、およびソフトウェアを備えています。

しかし、実際のデータサイエンスではスーパーコンピュータを使う前の段階として、データ収集や、選別、整形などが必要であり、これらの作業には、今までに培われたデータサイエンス分野の知見が必須です。

一方、スーパーコンピュータのデータサイエンスへの活用法については、まだ十分検討されておらず、その結果、研究対象が研究室のワークステーションで扱える規模のデータに制限されている研究者も多いと考えられます。

そこで、長くデータサイエンスに携わっている方や、これから取り組もうとされている方、また、既にスーパーコンピュータを使われている方や、まだ使っていないけれどもスーパーコンピュータに興味がある、という方等、様々な立場の皆様の情報交換の場として、本シンポジウムを開催します。

開催日時

2018年10月 2日(火) 13時30分 ~ 17時30分

プログラムおよび講演資料

13:30-13:35開催挨拶
13:35-14:05講演者:内田 諭 (九州大学 言語文化研究院)
講演題目:言語研究とスーパーコンピュータ
講演概要:
近年のインターネットとコンピュータの発達は、言語研究にも大きな影響を与えており、大規模なデータを論拠とした研究が多くなってきている。従前の言語学が母語話者の内省を拠り所として発展してきたことを考えると、その研究手法にパラダイムシフトが起きていると言えるだろう。本発表では、科学技術の発達がさらに進み、高性能なスーパーコンピュータが登場する中、言語研究はどのような方向に進むのか、またスーパーコンピュータは言語研究の役に立つのかという点について議論する。
14:05-14:35講演者:仙田 徹志 (京都大学 学術情報メディアセンター)
講演題目:経済統計ミクロデータの高度利用の展望
            -農業統計におけるこれまでの研究と統計法改正をふまえて-
講演概要:
経済統計におけるミクロデータの二次的利用は、90年代後半から盛んになってきていたが、2007年統計法改正を経て、いっそう推進されてきた。また、昨今はEBPM(Evidenced Based Policy Making)の必要性が叫ばれるなか、本年5月に統計法は再び改正され、経済統計ミクロデータの二次的利用は新たな局面に入りつつある。本報告では、農業統計におけるこれまでの研究成果について述べ、統計法改正をふまえた経済統計ミクロデータの高度利用について展望する。
14:35-15:05講演者:伊東 栄典 (九州大学 情報基盤研究開発センター)
講演題目:大規模ネットコンテンツの分析
講演概要:
近年,YouTubeやネット小説など,オンライン利用可能なコンテンツが増加している。発表者は,ニコニコ動画および「小説家になろう」を対象に,コンテンツ検索,推薦,多様性分析を研究している。本発表ではスーパーコンピュータを用いた分析手法と結果について述べる。
休憩
15:30-16:00講演者:前原 一満 (九州大学 生体防御医学研究所)
講演題目:次世代シークエンスデータ解析におけるITO利用の現状と課題
講演概要:
主要な生物のゲノム解読が完了したいま、生命科学はゲノムにコードされた情報の使われ方の解明に注力している。当研究室では、次世代シークエンサー(NGS)と呼ばれるDNA断片を大量に読み取り可能なマシンを活用し、ゲノムと核内タンパク質の複合体であるクロマチンから得られるエピゲノム情報を手がかりに、細胞の将来予測(遺伝子選択機構の解明)を試みている。本発表では、私自身のNGSデータ解析におけるITO利用方法の実態、および高い計算負荷に阻まれがちな解析の実例や、現在開発を進めている一細胞データ解析手法について紹介する。
16:00-16:30講演者:小山田 耕二 (京都大学 学術情報メディアセンター)
講演題目:ビッグデータからの状態遷移を支援する視覚的分析技術について
講演概要:
現在、科学的手法を構成する学術的問いの構築、仮説形成・検証、社会的実装の各プロセスにおいて、可視化効能を包括的視点、発見的視点、共感的視点からを向上させるビジュアルデータサイエンスの研究に取り組んでいる。特に、スーパーコンピュータや計測システムから生成された科学的ビッグデータから科学的発見を引き出すために、インタラクティブな可視化技術を使用する視覚的分析技術の開発に注力している。本講演では、ビッグデータからシステム状態の同定とその遷移の発見を支援するための視覚的分析技術について報告する。適用例として、線虫の早期細胞分裂段階におけるカルシウム動態に関する状態推定などの研究成果を示す。
16:30-17:00講演者:吉川 顕正 (九州大学 国際宇宙天気科学・教育センター)
講演題目:汎世界的な地磁気ネットワーク観測によるデータ活動の紹介
講演概要:
九大ICSWSEでは、太陽地球系科学、宇宙空間物理学推進の為、過去30年以上にわたり汎世界的な地磁気ネットワーク観測システム(MAGDAS: MAGnetic Data Aqisition System)を構築してきた。MAGDASは世界最大の地磁気観測網としてしられ、取得されたデータは国内外に提供され、様々な学術活動に活用されている。地磁気擾乱データには様々な現象による影響が重畳し、太陽風擾乱や太陽爆発現象に起因する様々な磁気圏・電離圏応答、地球の大気変動とプラズマ運動が強く相互作用する上下結合、極域から赤道域圏にかけて形成されるグローバルな電磁結合回路による水平結合、惑星間空間変動現象に対する地圏の電磁応答を反映した地象現象など、様々な結合現象の理解に活用されている。本講演ではICSWSEのデータ活動、複合系の典型的なデータ解析手法を紹介しつつ、最新データ科学の展開へと繋がる議論を展開する予定である。
17:00-17:30自由討論・まとめ
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