学術会合報告 ------------------------------------------------------------------------------- 高性能大規模計算と精度保証付き計算に関するワークショップ 渡部 善隆 ------------------------------------------------------------------------------- 標記研究集会が,平成13年度日本学術振興会科学研究費「高性能大規模計算のための数 値解析の研究」(研究代表者:田端正久, 基盤研究A(1))および「精度保証付き数値計算 の新展開をめざしての総合的研究」(研究代表者:中尾充宏, 基盤研究B(1))の研究成果 発表と研究打ち合わせを目的として,2001年11月5日(月)から7日(水)まで福岡市東区の 九州大学情報基盤センターで開催されました.また,このワークショップには九州大学 を訪問中のドイツKarlsruhe大学のMichael Plum教授とアメリカHouston大学のYuri Kuzunetsov教授の講演もあり,両教授とも積極的に討議・懇親会に参加されました. 講演数は23件でした.発表順敬称略で紹介します(`・'は共同研究者です). 大石進一(早稲田大),皆本晃弥(佐賀大),友枝謙二(大阪工業大),河野敏行・仁木滉(岡 山理科大),山本野人(電気通信大),渡部善隆(九州大),Michael Plum(Karlsruhe大), 藤野清次(九州大),長藤かおり(広島市立大学)・中尾充宏(九州大),Yuri Kuznetzov (Houston大),川中子正(東京工業大),陳小君(島根大),西田詩(鹿児島大),土屋卓也 (愛媛大),木村正人(九州大),中木達幸(九州大),若野功(京都大),大塚厚二(広島国際 学院大),牛島照夫・千葉文浩(電気通信大),西田孝明(京都大),今井仁司(徳島大), 金山寛・田上大助・宮本隆二・井本光一郎 (九州大),鈴木厚・田端正久(九州大) 講演内容は,線形方程式に対する反復解法の前処理・収束性・精度保証,非線形微分方 程式に対する計算機援用証明・安定性解析・数値計算,有限要素数値シミュレーション, ソフトウェアの設計など,実に多岐にわたりかつ興味深いものでした. 個人の趣味で興味深かった講演を取り上げて紹介するのは差し控ることにして,会場係 として全講演を拝聴した大雑把な感想を以下報告したいと思います. まず,この研究集会は九州大学で過去に開催された「新しい科学計算技法とその誤差解 析」(1996年11月)および「数値解析の最前線−流体計算から精度保証まで](1998年10月) に続くものと位置づけることができます.習慣というものは恐い(?)もので,2年3年おき の3回目の開催となると,なんとなく秋の恒例行事と参加者が受けとっているような印象 を受けました. また,過去の研究集会と比べて,「誤差解析」を媒介とした理論と計算との融合が着実 に進んでいると感じました.つまり,工学的な観点からは数値シミュレーションに対す る収束証明や計算の品質への意識が,理学的な観点からは並列計算・区間演算・多倍長 計算を効率的に用いていかに実際の現象や数理モデルに接近するかという意識が強くな ったように思えます. 最後の感想はきわめて個人的なものです.このワークショップを含めた前後の研究集会 でも「×月のどこどこで話したものです」という前置きが少なからずありました.活発 な活動状況を否定する気は毛頭ありませんし,同じ話を2度聞いて内容を深く理解できる ということももちろんあります.しかしながら,今年は秋から冬にかけての研究集会が 多いなと感じたのは正直なところです. 《論文にまとめる直前のある程度出来上がった成果だけではなく,とりあえずのアイデ ィアや困っていること,苦労話などをざっくばらんに話し合うワークショップがあった ら面白いだろうな,でもその発表準備をするのも大変だな〜》などと,ある講演(秘密で す)を聞きながら思っていました.それはさておき,この研究集会に参加することにより, 最新の研究動向について多くの貴重な情報を得ることができたことは非常に意義深いこ とだったのは言うまでもありません. 懇親会は初日(5日)博多名物「水たき」で大いに盛り上がりました. 最後に,積極的な参加と討論による稔りある研究会を企画していただいた田端・中尾両 先生に感謝いたします. ------------------------- わたなべ よしたか.九州大学情報基盤センター *この報告の著作権は日本応用数理学会に属します。