-------------------------------------------------------------------------------- SCAN 2004 渡部 善隆 -------------------------------------------------------------------------------- 標記国際会議が2004年10月4日から10月8日までの5日間,福岡県福岡市中央区の西鉄グラ ンドホテルで開催されました.会議の正式名称は“11th GAMM-IMACS International Symposium on Scientific Computing, Computer Arithmetic, and Validated Numerics” です. 国際シンポジウムSCANはほぼ隔年で開催され,科学技術計算における計算手法・アルゴリ ズム等について,特に数値計算結果の信頼性(品質保証)の観点から数値解析手法・プログ ラミング・ソフトウェア・理工学分野への応用例に関する研究発表および討論を行なう会 議です.SCANはこれまで欧米各地を持ち回りで開催されており,今回のSCAN 2004がはじ めての欧米以外での開催となりました. またこの会議は,九州大学大学院数理学研究院21世紀COEプログラム「機能数理学の構築 と展開」の研究テーマと深く関わるもので,実行委員長は拠点リーダーの中尾充宏教授が つとめられました. 実行委員のひとりとして,はじめての日本での開催ということもあり,正直どのくらい人 が集まるだろうかと心配していました.しかしながら,いざ受付を開始してみると,こ ちらの(勝手な)予想を超える講演申込および参加申込がありました.具体的な参加者は, ドイツ,日本,フランス,アメリカ,ハンガリー,カナダ,韓国など19カ国から約124人 (うち外国人61人)でした.また,多くの外国からの参加者が会場の西鉄グランドホテルに 宿泊したこともあってか,発表会場以外のあちこちでも朝昼夜を問わず活発な討論や(さ まざまな)情報交換が行なわれていました. 5日間の会議期間中,初日は懇親会,5日からは午前中1つの会場に全員が参加しての招待 講演が8件,午後は6日の熊本・阿蘇へのバス旅行を除き2つの会場に分かれて一般講演が 83件組まれました.会議録は査読を経た後Journal of Computational and Applied Mathematicsの特集号として2005年に出版される予定です. 招待講演の内容は,伊理正夫先生による精度保証付き数値計算の基礎をなす区間演算の提 唱者の一人である(故)須永照夫 元九州大学教授の業績紹介に始まり,線形計算の精度保 証,数学的未解決問題に対する計算機援用証明,非線形問題・数値積分・偏微分方程式の 精度保証付き数値計算など,多岐にわたり興味深いものでした. 一般講演は,計算機において発生する丸め誤差の制御技術(ハードウェア・ソフトウェア), プログラミングツール,代数学的計算機援用数学,有限要素法の誤差解析,連立1次方程 式の誤差評価および収束性,最適化問題,精度保証付き数値計算の産業界への応用など, 数値計算結果の品質保証に関する研究の広がりと深まりを実感する内容でした. 次回は2006年にドイツのDuisburgで行われる予定です. *この報告の著作権は日本応用数理学会に属します。