吉田 哲基:
多重および近接固有値をもつ楕円型固有値問題に対する精度保証付き数値計算,
九州大学大学院数理学研究府修士論文, 2001, 28 pages.


本論文では、自己共役楕円型固有値問題 の多重固有値及び、近接固有値に対する精度保証付き数値計算を考える。 本固有値問題に関しては [Nagatou], [M.T.Nakao, N.Yamamoto, K.Nagatou] でその固有値の精度保証付き計算法が提案され、実際の適用が得られているが、 そこで与えられている方法は単純固有値にしか適用できなかった。 本論文は、行列の多重及び、近接固有値を精度保証付きで計算するという Rump の考え方を、この楕円型固有値問題にも拡張することを目標にしたものである。

本論文においてはまず第2節において、Rump の方法に基づいた行列の固有値の精度保証の方法を紹介する。 これは、従来の方法ではシステムが singular になってしまうために適用できなかった、 行列の多重固有値に対する精度保証を実現したものである。 J.J.Dongarra, C.B.Moler, J.H.Wilkinson による論文では、 二重固有値に対する精度保証を中心に書かれているが、 Rump は一般に n 重固有値に対して適用可能な方法を与え、 更に実際の計算に対して、大幅なコスト削減を実現している。

第3節では、楕円型固有値問題の単純固有値に対する精度保証について述べる。 本論文の目的は、楕円型固有値問題の多重固有値に対する精度保証の実現であるが、 基本的な固有値問題の検証の手順を明らかにするために、 単純固有値についてもふれておく。この節で述べるアルゴリズムは、 多重固有値に対しては適用できない。なぜならば、 システムが singular になるからである。

そこで、第4節では多重固有値に対しても適用できる新たなアルゴリズムを構築する。 これは、行列の固有値問題において、 固有値・固有ベクトルそのものを包み込むのではなく、固有値と、 それに対する不変部分空間の基底を包み込むという Rump の考え方を楕円型固有値問題に対しても適用しようとするものである。 このシステムに対する解の包み込みは、不動点定式化を用いて、Banach の不動点定理の成立条件を計算機内で数値的に検証することによって行っている。 更に検証付きで求めた行列に Gerschgorin の定理を適用して目的の固有値を包み込んでいる。

最後に、第5節で結果の考察と今後の検証課題を述べる。