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領域概要

学術変革領域研究(B)

複雑系階層的力学

結晶性高分子/フィラー複合材料の力学特性を、ナノ、マイクロ、マクロの各空間スケールをつないで理解し、材料開発・設計へ展開する新しい学理を創成します。

  • 研究期間2026年度~2028年度
  • 課題番号26B206
  • 領域代表者樋口 祐次(九州大学・情報基盤研究開発センター・准教授)
  • キーワード複雑系階層的力学、結晶性高分子、複合材料、高分子構造・物性、界面

研究の背景・目的

カーボンニュートラル社会の実現に向けて、軽量高強度で加工性の高いプラスチックは、電子・機械部品やモビリティ部材などの構造材料として利用が進んでいます。所望の力学特性を発現させるために、結晶性高分子にフィラー(充填剤)を添加した複合材料が多く用いられています。

一方で、高分子/フィラー複合材料の作製条件は多様化・複雑化しています。個々の作製条件からだけでは力学特性を理解しにくく、経験に基づく開発に頼らざるを得ない状況が残されています。本領域では、この「複雑系」に対して、力学特性を向上させる必要条件を解明する学理構築に取り組みます。

階層構造をもつ結晶性高分子では、ナノとマクロの構造・力学特性が個別に解明されてきました。しかし、構造変化や力学特性がスケールをまたいでどのように相互作用するのか、また力学特性の支配因子をナノメートルスケールに遡って説明することは、なお大きな課題です。

複雑系階層的力学の研究概念図

何を明らかにするのか

本領域では、ボトムアップで結晶性高分子/フィラー複合材料の力学特性を理解します。界面のはく離・空孔生成、各空間スケールにおける変形・破壊プロセス、ナノからマクロまでの力学特性の相関を明らかにし、ナノスケールの力学特性からマクロな力学特性を予測することを目指します。

高分子の配向性とその変化プロセスに着目し、高分子科学・界面科学、統計物理学、材料開発研究を連携・融合させることで、結晶性高分子/フィラー複合材料の力学特性の支配因子をナノメートルスケールに遡って解明します。

研究体制

計算科学、実験力学、材料創製の連携

本領域は、A01 計算科学、A02 実験力学、A03 材料創製の三つの班で構成されます。分子シミュレーション、ナノスケールのひずみ可視化、材料構築プロセス制御を接続し、構造情報、設計指針、相互検証、試料提供を循環させながら研究を進めます。

名称 主な役割
A01 計算科学 分子シミュレーションによりナノスケールの変形・破壊プロセスを解明し、ナノとミクロをつなぐ解析技術を確立します。
A02 実験力学 TEMを用いたナノスケールひずみ可視化と、ミクロからマクロへの解析モデル構築に取り組みます。
A03 材料創製 界面や成形プロセスが複合材料の構造に与える影響を解明し、材料構築プロセス制御技術を確立します。

期待される波及効果

ナノスケールの異種物質界面相互作用が、階層構造を経てマクロな物性へ影響する現象は、高分子材料やソフトマターに加え、セラミックスや金属にも普遍的です。本領域の成果は、高分子科学・ソフトマター物理学だけでなく、材料科学全般の発展へ寄与します。

経験的に開発されてきた高分子/フィラー複合材料に対して材料設計指針を提案することで、材料の耐久性向上、開発・資源コストの削減、廃棄木材利用や廃棄物リサイクルプロセスへの展開など、将来の社会実装につながる材料研究の進展が期待されます。