次に公開鍵暗号方式について説明します．公開鍵暗号方式では，暗号化と復号化 に用いる鍵が異なります．Aliceへの通信を行なう場合，Aliceは暗号に用いる鍵 を二つ用意します．片方の鍵を通信相手に渡す公開鍵(public key)とし，もう一 方の鍵をAliceだけが知る秘密鍵(private key)とします．ここでは14#14を公開鍵， 15#15を秘密鍵とします．
BobがAliceへ平文4#4を暗号文7#7にして通信する場合，暗号化関数5#5とAliceの 公開鍵14#14を用いて暗号文17#17を作成します．この7#7をAliceへ送ります． 受信者であるAliceは，復号化関数を用いて暗号文7#7を復号化するわけですが， その際には自分だけが知っている秘密鍵15#15を用いて復号化します．復号化関数 が18#18であるとすると，元の通信内容である平文4#4は19#19という関数で 与えられます．この際，暗号文20#20は秘密鍵15#15でなければ復号化できない 所に公開鍵暗号方式の強さがあります．
暗号化関数5#5と復号化関数18#18により，様々な種類の公開鍵暗号方式が提案され ています．また同じ暗号方式であっても，鍵9#9の長さにより暗号の強度(解読さ れにくさ)が変化します21#21．ただし，どち らの暗号方式でも暗号の強度が鍵の秘匿性にかかっているのは同じです．共通暗 号鍵方式では，鍵データを盗聴の可能性のある通信路上にそのまま流すわけには いきません．鍵を盗聴されれば，暗号化と復号化に同じ鍵を用いるため他者にも 暗号文の解読が可能になってしまうからです．しかし，暗号化および復号化にか かる手間が少ないため処理時間が早いという利点があります．これに対して公開 鍵暗号方式では，秘密鍵は同様に秘匿しなければなりませんが，公開鍵は他者に 知られても問題ありません．通信路上に公開鍵データを流しても良い分だけ，公 開鍵暗号方式がインターネットに向いているといえます．しかし現在の公開鍵暗 号方式は暗号化に要する処理時間が長いという問題があります．
