まずは共通鍵暗号方式について説明します．共通鍵暗号方式とは，図 3に示しているような暗号化と復号化の際に同じ鍵を用い る暗号方式で，古くから使われてきた暗号方式です．簡単な共有暗号鍵方式には， シーザー暗号方式があります．これは，アルファベットを9#9個だけシフトする といったものです．暗号化関数10#10は文字列4#4を9#9シフトする関数と言え ます．復号化関数は9#9だけ逆にシフトする関数になります．例えば，`` I love You.''という文を送りたい場合に，1つずらして`` J mpwf Zpv.''と します．この場合は1つシフトしているので11#11になります．上記のシーザー暗 号のように，共通鍵暗号方式では送信者と受信者の間で同じ鍵を共有して暗号化 および復号化を行ないます．
図3のように，BobがAliceに文を送ることを例にします． まず，最初に両者の間で用いる暗号方式(暗号化/復号化関数)と，共通して用い る暗号鍵を決定します．BobがAliceに文章4#4 (``今日遊びに行こう'')を送る場 合，二人の会話を他人に盗聴されないように暗号化するものとします．Bobは先 に取り決めた暗号化関数5#5と暗号鍵9#9を使って暗号文12#12を作成し， この暗号文をAliceに送信します．Aliceは受けとった暗号文を，すでに保持して いる共通暗号鍵9#9で復号化します．暗号化関数，復号化関数，共通鍵について の合意がとれているので，問題なく復元できます．
共通鍵暗号方式の問題は，その鍵の共有方式にあります．インターネットのよう に盗聴の危険性のある通信路では，通信により暗号鍵を送ると，鍵を盗聴される 可能性があります．共通鍵暗号方式では，暗号化と復号化に同じ鍵を用いるため， 鍵がバレてしまうと暗号化による安全性は根本から壊れてしまいます．
