渡部 善隆, 山本 野人, 中尾 充宏:
一般化固有値問題の精度保証付き計算とその応用,
日本応用数理学会論文誌,
Vol.9, No.3 (1999) pp.137-150.
本論文では
一般化固有値問題は微分方程式,差分近似方程式系の安定性,Markov連鎖,
経済理論,振動解析,主成分分析,熱伝導問題,化学反応系など,科学の分野に広く
現れる.
また多くの場合
高次の行列に対する固有値問題の直接解法は一般に存在しない.
現在広く使われている科学技術計算ソフトウェア:
LAPACK, NAGライブラリ, IMSL, NUMPACなどで採用されている標準固有値問題
しかしこれらの手法はある収束条件を課した反復近似であり, その結果は(収束性・安定性の議論が十分になされているとしても)厳密に正しいとは いえない. 計算機による固有値問題の数値計算を精度保証付きで行なうためには, 浮動小数点演算によって発生する丸め誤差の見積りに加えて反復法の 打ち切り誤差をも考慮する必要がある.
我々は本論文において,Cholesky分解による標準固有値問題への変形を通して 固有値の絶対値最大の上界を評価する既存の2つのアルゴリズムを紹介し, それぞれを一般化固有値問題の特質に着目することにより計算精度・速度両面から 改良した方法を提案する. さらに各手法を計算機上に実装し性能評価を行って得られた知見を報告する. 数値実験では浮動小数点演算の結果を常に包含する区間演算ライブラリを用いた. 従って得られた数値結果は厳密に精度保証されたものである. 最後に応用例としてStokes方程式の有限要素解に対するa priori誤差評価定数 を厳密に評価した結果を紹介する.
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